YNUプラウド卒業生文庫 長谷川 善和
長谷川 善和(はせがわ よしかず)
1930年03月12日 -
経歴
1930年3月12日 | 長野県飯田市に生まれる。 |
1955年 | 横浜国立大学学芸学部卒業。横浜国立大学地学専攻科入学。 横浜国立大学助手(11月~)を務め古脊椎動物の研究を進める。 |
1964年 | 横浜国立大学学芸学部非常勤講師 |
1965年 | 国立科学博物館文部技官、横浜国立大学学芸学部非常勤講師(併任) |
1968年 | フタバスズキリュウ第1次調査 |
1969年 | 国立科学博物館研究官 |
1970年 | フタバスズキリュウ第2次発掘調査 |
1972年 | 「瀬戸内海小豆島の釈迦ヶ鼻沖合から産出した更新世後期のナウマン象」により東京大学から理学博士を取得 |
1973年 | マダガスカルへ海外学術調査(1975年2回目の学術調査) |
1975年 | 国立科学博物館主任研究官、琉球大学教育学部非常勤講師(併任) |
1976年 | 日本洞窟学会評議員(1993年まで)、エチオピアへ海外学術調査 |
1978年 | 東京大学大学院理学系研究科非常勤講師(併任)8月 岩手県岩泉町茂師で発見のモシリュウ(茂師竜)の化石鑑定 |
1979年 | 横浜国立大学教育学部教授、国立科学博物館特別展準備のためソ連へ |
1980年 | 岩手県立博物館開館記念講演「一片の骨からいわての歴史を探る」(茂師竜紹介) 東京大学、名古屋大学、静岡大学、東北大学、京都大学、広島大学等の非常勤講師併任 中国へ洞窟学の実状調査、ヨーロッパへ博物館視察、中国古脊椎動物調査 |
1981年 | 「中国の恐竜展」に展示されたマメンキサウルスの上腕骨と茂師竜の骨比較 米国へ、第8回国際洞窟学会及び海生哺乳類化石研究のため |
1984年 | 熊本の化石(上益城郡御船町・ミフネリュウ)を日本で最初の肉食恐竜と鑑定 モンゴル人民共和国へ古脊椎動物に関する調査 |
1988年 | 「日本の恐竜」(福音館書店かがくのほん)出版 |
1991年 | 日本の恐竜第1号の論文として岩手県のモシリュウについて発表 |
1995年 | 横浜国立大学退官。群馬県立自然史博物館参与に就任 |
1996年 | 群馬県立自然史博物館初代館長に就任 |
2006年 | フタバスズキリュウはエラスモサウルスの新属新種として正式に記載、学名「フタバサウルス・スズキイ」と決定 |
2008年 | 「フタバスズキリュウ発掘物語」出版 |
2011年 | 日本哺乳類学会賞 |
2012年 | 日本哺乳類学会特別賞 群馬県立自然史博物館名誉館長として現在も活躍中 |
業績
主な著作
書籍
- 「恐竜はどう暮らしていたか」E・H・コルバート・長谷川善和訳 1981年 どうぶつ社
- 「恐竜の百科」デビッド・ランバート編・長谷川善和/真鍋真訳 1985年 平凡社
- 「日本(にほん)の恐竜(きょうりゅう)」長谷川(はせがわ)善(よし)和(かず) 文(ぶん)・藪内(やぶうち)正幸(まさゆき) 絵(え) 1988年 福音館書店
- 「恐竜(きょうりゅう)はっくつ記(き)」長谷川(はせがわ)善(よし)和(かず)文・夏目(なつめ)義一(よしかず)絵 1998年 福音館書店 韓国語版 2009年 ウンジン・ジュニア社
- 「よみがえる恐竜たち」長谷川善和・白木靖美 1994年 未来文化社
- 「恐竜探検隊」 ロイチャップマンアンドリュース・長谷川善和訳・小沼直人絵 1995年 講談社
- 「学研の図鑑 化石・岩石」監修 長谷川善和・加藤磐雄 1976年初版 1999年40刷 学習研究社
- 「学研の図鑑 恐竜(きょうりゅう)」 監修 長谷川善和 1990年初版 1998年28刷 学習研究社
- 「フタバスズキリュウ発掘物語」8000万年の時を経て甦ったクビナガリュウ 長谷川善和著 2008年初版 2016年2刷 化学同人
論文
- On a new Insectivora from the upper Kuzuu formation in Japan
1957年 横浜国立大学 Ⅱ―7 - 日本の第四紀小型哺乳類動物化石層について
1966年 化石 vol.11 - 瀬戸内海小豆島の釈迦ヶ鼻沖合から産出した更新世後期のナウマン象
1972年 国立博物館 Vol.15 No.3 - 脊椎動物の変遷と分布
1977年 日本の第四紀研究その発展と現状 - リュウキュウジカの名称について(琉球列島の古脊椎動物相)
1978年 琉球列島の地質学研究 3巻 - New Materials to the Knowledge of the Genus Shikamainosorex Hasegawa 1957 (Insectivora, Mammalia)
1976年 Acta Zoologica Cracoviensia Tom 21 - 斬新-中新世のペンギン様鳥類化石(PartsⅠ―Ⅶ)
1979年 サイエンス Vol.206 No.4419 - 群馬県安中市の富岡層群原市層から発見された中新世無飛翔性ハクチョウについて 2001年 群馬県立自然史博物館研究報告 5号
- 群馬県に分布する、瀬林層(下部白亜系)から産出したスピノサウルスと考えられる化石
2003年 群馬県立自然史博物館研究報告 7号 - A Pliocene colobine from the Nakatsu Group,Kanagawa,Japan
2005年 ANTHROPOROGICAL SCIENCE - 石灰岩洞窟内で発見された九州産二ホンオオカミ遺骸
2004年 群馬県立自然史博物館研究報告 8号 - 群馬県の富岡層群(中期中新世)産ウミガメ化石Syllomusの骨格復原
2005年 群馬県立自然史博物館研究報告 9号 - A NEW ELASMOSAURID PLESIOSAUR FROM THE UPPER CRETACEOUS OF FUKUSHIMA, JAPAN 2006年 Palaeontology Vol.49 Part3
- 琉球列島宮古島ピンザアブ洞窟で発掘された新種のネズミ亜化石
2009年 群馬県立自然史博物館研究報告 13号 - 秋吉台の鍾乳洞などから発見された哺乳類化石からみた第四紀哺乳類動相
2009年 哺乳類科学 49巻 - 日本における後期更新世〜前期完新生産のオオヤマネコLynxについて
2011年 群馬県立自然史博物館研究報告 15号 - 日本の現世哺乳類の起源を考える
2012年 日本哺乳類学会「哺乳類科学」52巻2号 - モロッコのセノマン階から産出した新たなティタノサウルス形類恐竜(竜脚類)の標本 北アフリカの後期白亜紀における古生態と竜脚類の多様性
2014年 群馬県立自然史博物館研究報告 18号
特別展カタログ等
- 中国の恐竜展 魚類から猿人までの4億年 1981年(東京・大阪・福岡)
(主催 国立科学博物館、日本中国文化交流会、朝日新聞社) - 日本初公開 アルゼンチンの大恐竜展―南米の古生物―1996年 群馬
(群馬県立自然史博物館開館記念展1996年10月〜1997年2月) - 世界最大 恐竜王国2012〜恐竜オールスター、幕張に大集結〜 2012年
フタバスズキリュウ発掘が端緒に
国立博物館に在勤中、いわき市の鈴木直少年が発見した骨から、クビナガリュウの仲間であることを予見し、慎重に発掘を進めた。1968年第1次調査、1970年第2次調査を通して、8000万年前に生きていたと思われる、恐竜時代の海生爬虫類クビナガリュウ(フタバスズキリュウと命名)の一個体分に近い化石が発掘された。クリーニング、材化石の入った産状模型、欠損部分の補充、骨格の復元、新種のクビナガリュウであることの学問的裏付けを経て種の同定、38年後、「フタバサウルス・スズキイ」と学名が決まった。この発掘を契機に、日本にも恐竜がいたのではないかという機運が高まり、全国各地で恐竜の化石発見・発掘がされていく端緒となった。
学術調査は日本にとどまらず、マダガスカル、ヨーロッパ、英国、米国、エチオピア、中国、韓国、オーストラリア、モンゴル、ソ連、南米などを訪れ、古生物の比較、地質、発掘等の調査を行い、古脊椎動物の研究を深めた。
群馬県立自然史博物館創立に尽力
国立科学博物館研究官としての研究や博物館運営の経験を活かし、美祢市歴史民俗資料館、いわき市石炭化石館、飯田市美術博物館、千葉県立中央博物館、北九州市立自然史博物館、神奈川県立博物館などの基本構想、建設、資料評価などに関わった。横浜国大教授退官後は、群馬県立自然史博物館の館長、名誉館長として、古脊椎動物の調査・研究を継続し、論文にまとめるとともに、自然史博物館の収蔵・展示などに深く関わり精力的に活動している。